「自由という幻想」をテーマとした
しのき美緒初の短編集。
ひとはなにかをひきずって歩いている
本書のタイトルは「軛」。軛とは車の轅の前端に渡して、牛馬の頸の後ろにかける横木のことで、そこから転じて「自由を束縛するもの」という意味で使われる。
本書は著者であるしのき美緒が「自由への不可能性」を書き続けた足跡だ。
自由を束縛するものを例えるものとして、他にもいろいろあると思う。「檻」であったり、「鎖」であったり。自分の生きづらさを表現するうえで、そのような言葉を使う書き手は多い。だがしのき美緒は、おそらくあえて、その言葉を避けた。彼女は人間の生きづらさを「比喩=観念」としてとらえるのではなく、「本質的」に、いやもっと言えば「身体的」にとらえられているからだ。私たちは(物理的に監禁されているのでなければ)閉じ込められるわけでも、遠くへ行けないように繋ぎ止められているわけではない。私たちは行こうと思うところにいけるし、したいことができる。そのことを彼女はよく知っている。ただ私たちは荷車をひく「重荷」があるだけだ。このタイトルにしめしたのはそういう想いなのだろう。そしてそれは人生そのものだ。(解説より)
収録作品
「軛」「 ガラスの家 」「サンクチュアリ」「井戸」「トカゲ」
「アンザイレン」「白に埋まる」「十二月一日の恋人たち」「BLUE ON BLUE」
しのき美緒プロフィール
しのき美緒(しのき・みお)
東京都出身 千葉県在住
國學院大學文学部文学科卒業 国語学専攻
インディーズ作家。猫とコーヒーと歴史時代小説が好き。
執筆活動と編集作業に追われ、毎日を慌ただしく生きている。
2016年4月より小説投稿サイト「エブリスタ」で小説を発表。
2019年『帰蝶と信長』をAmazon Kindleにて配信。
2020年4月、ファンシーコウ率いる小説家ユニットBekkoに参加。
インディーズ作家によるフリーペーパー『THE TANPENS』レギュラー執筆者となる。
2020年12月 文芸誌『BEKKO』をファンシーコウとともに創刊。
2021年5月 THE TANPENS退会。
同年同月 文芸誌『BEKKO』代表編集人